西義之/エルフ湯つからば


エルフ湯つからば(1) (モーニング KC)

■冒険ファンタジーの世界の端っこを描く話。 深みを出すことも暴走させることもできそうな内容だが、 一巻はまだぼやっとした印象。

冒険者のいる、つまり退治すべき魔物のいる世界。 そこで、伝説となっているのが、巡回温泉湯、 幻の移動風呂屋であるエルフ湯。冒険者なら一度は入りたいという、 1分浸かれば体力全快、5分浸かれば夢の世界 を提供してくれるというもの。しかし移動風呂屋だけに、 出会える確率はとても小さい。そして、 番頭エルフのユフさんが可愛いと評判なのだった。


客の抱えている問題を見抜き、疾病を除去するだけでなく、 迷いも昇華させるという風呂。経験者はそれを喧伝し、 ギルドに番頭エルフのファンクラブを作り始める、 というのがオチ。


話の中軸を移動風呂屋としているだけに、 来訪者をとっかえひっかえして バリエーションを出すしかない。 なので舞台をギルドに移して描くエピソードも 出てくるが、結局のところ本題は毎度変わらない。


そこでどう展開するのか、暴走させるのか、 と思っていると、魔法に長じ戦闘力も抜群な 番頭エルフが、その風呂屋をやる能力を得るために 自分が入湯した場合に得られる癒やしを何者かに 上納している、という設定あり。しかし この設定、重いような、 そうでもないような、微妙な感じ。 ここを掘っていくことで 大きな物語の柱にしていくのだろうか。


いまのところは大きな物語の番外編としてなら成立しそうな 作品、という印象。


【データ】
西義之 (にしよしゆき)
エルフ湯つからば
【発行元/発売元】講談社 (2018/8/3) 【発行日】2018(平成30)年8月1日発行 ※電子版で購入
■評価→ C(標準) ■続刊購入する?→★★★
■購入:
amazon→ エルフ湯つからば(1) (モーニング KC)
『ムヒョとロージーの魔法律相談事務所』や『ライカンスロープ冒険保険』の西義之による新境地! 冒険には心強い仲間や強い武器も必要だが、傷ついた時の癒やしも重要である。浸かればあらゆる疲れや汚れを洗い流してくれるという幻の移動温泉「エルフ湯」。たった一人で温泉を率いる番頭・ユフは、懸命に冒険者の「癒やし」のために風呂を入れてくれるという……。異世界を舞台に繰り広げられる、まったく新しい冒険物語、開幕!


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土屋計/鉄刻の清掃員さん


鉄刻の清掃員さん 1 (MAGCOMI)

■「時間」を切り売りする話は面白いが、 その他の要素を盛りすぎではないか。

「時間」が売り買いできる、という ことが中軸となっている話。ただし、 おおっぴらにはなっておらず、知る者ぞ知る状態。 若い子の時間ほど純粋であり高く売れる。 ただし、相手の承諾がないと買えないため、 時間の売り買いの概念が分からない幼児からは 奪えない。


この時間を切り売りする設定は面白い。 ただし、そこにガジェット的ギミックが入り、 身体が変わるというのは傍流SFマンガチック。 さらにアクション要素が加わり、これが 読みづらい。果ては、失われた身体、という 設定まで載せてきており、それが主人公にとっての テーマで、自分の身体を取り戻すのが目的、 という物語。いろいろ載せすぎていて、 話がごちゃついている。


主人公は清掃員、時間にまつわるトラブルを 処理するという、後ろめたい身が皆 支援している会社に所属する立場なのは巧いのだが、 話が複雑になりすぎたのに、 主人公の目的は未来ではなく過去の復旧に 向かっている時点で、読者にその複雑さを読み解く 意欲がわかないのは致命的。


広がる話ではなく閉じていく話を 複雑にすることで読み応えがあるように見せようとする のはあまり歓迎しない。このテーマならもっとシンプルでいいと 思うのだが。


【データ】
土屋計 (つちやけい)
鉄刻の清掃員さん
【初出情報】月刊コミックガーデン(2017年〜2018年) 【発行元/発売元】マッグガーデン (2018/4/13) 【発行日】2018(平成30)年4月28日初版発行 ※電子版で購入
■評価→ C(標準) ■続刊購入する?→★★
■購入:
amazon→ 鉄刻の清掃員さん 1 (MAGCOMI)
血で血を汚すハイギミックアクションバトル、開幕…!!人の「時間」を高値で売りさばく違法ビジネスによって、世界では少しずつ異変がおきていた。民間の『特殊清掃員』として働く兎村はブローカーに立ち向かう…。


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新井春巻/魔法少女になれません。


魔法少女になれません。(1) (ヤンマガKCスペシャル)

■読者に前提共有させることを すっ飛ばして始めるような作品が 商業展開されるのはいかがなものか。 いろいろ勿体ない。

人を襲うシャドウを撃退する魔法少女もの。 退治すると願いの欠片がたまる。 それが満たされた時に願いがかなう、 そのためにプロの魔法少女をやっているらしい。


魔法少女であることが一般人にばれると 即死、というヘビーな設定。 その一方で、シャドウというのが、 女の子のストッキングを破るという類で、 戦いに負けてもねちょねちょになるだけで 命をとられるわけでもない、という、 成人漫画から成人要素を抜いたような、 ぬるい設定でもある。


という話であることは読み進めればわかるのだが、 その説明を済まさぬままに、ヒロインが シャドウ退治のため都会暮らしを始める。 その内容が、都会で暮らすためにバイトをしたり 学校に行ったりして、そのことが魔物退治 の障害になってしまうというコメディ展開。 前提を理解というか納得というか飲み込めないままの 読者を置いてきぼりにして様々なことが進んでいく。


巻末にある表題作と全く関係のない読み切りは 面白く、手短ななかに色々詰め込む才のある 作者であるようなので、入れる内容と順番の 整理さえしてくれれば良かったのになぁ、 と思いつつ、そういう仕事は編集がやることなのでは? 編集者の存在意義とは何なのか? とも思ってしまう。 出版社からリリースされるものは、出版社のフィルターを 信用しているからこそ購入するのであって、 それが機能しないのであれば今の時代、出版社に存在価値など ないわけで。


【データ】
新井春巻
魔法少女になれません。
【発行元/発売元】講談社 (2018/8/8) 【発行日】2018(平成30)年8月1日発行 ※電子版で購入
■評価→ D(問題) ■続刊購入する?→★
■購入:
amazon→ 魔法少女になれません。(1) (ヤンマガKCスペシャル)
シャドウを退治するプロの魔法少女・川下さおり。田舎から都会に出てきたばかりの女子中学生。都会で独り暮らしの荒波が魔法少女に襲いかかる。バイト先の店長の熱血が、同級生の善意が、同じ魔法少女のライバル心が、さおりの変身をはばむ! 変身したいけど変身できない魔法少女の日常コメディ!!



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藤井なお/ハロー ジュピター 好きっていって。


ハロー ジュピター 好きっていって。(1) (ポラリスCOMICS)

■ 彼氏ナシ歴=年齢の理系女子が AIロボと恋愛シミュレーションをするお話。

IT企業の開発部に勤める主人公は 彼氏いない歴が年齢という女子。 そこで、社内公募の恋愛シミュレーションAIロボの モニターに応募。アンケートに 自分の理想を詰め込んだところ、 そのとおりの外見の精巧なロボットがやってきたのだった。


人と遜色ないロボットがいる、という前提 で綴られる物語。基本は、恋愛マンガ。 それを、人工知能の組み込まれたロボットが 相手、という設定としたのは面白い。


そして、本来なら組み込むべき恋愛モードに なるチップを載せ忘れたので恋愛イベントが発生しない トラブル発生。 しかしもう情が移ったのでそうしたチップなしで 恋愛感情を醸し出せるかの実証に実験内容を チェンジする流れはなかなかユニーク。


おかげで堅物な男性とのもどかしい恋愛 的な雰囲気に。現状のAIロボは健康管理モードで 殆ど執事状態。でもそういう 男性というのは、女性のある種の理想ではなかろうか。


【データ】
藤井なお
ハロー ジュピター 好きっていって。
【初出情報】COMICポラリス(2017年〜2018年) 【発行元/発売元】フレックスコミックス (2018/7/11) 【レーベル】POLARIS COMICS 【発行日】2018(平成30)年7月25日初版第1刷発行 ※電子版で購入
■評価→ C(標準) ■続刊購入する?→★★★
■購入:
amazon→ ハロー ジュピター 好きっていって。(1) (ポラリスCOMICS)
彼氏いない歴=年齢の恋愛初心者女子・あん子。IT企業に勤める彼女は、社内公募でAI(人工知能)の彼氏と恋愛シミュレーションすることに……。「もうこの際、AIの彼氏でもいい!」、さっそくイケメンAI彼氏“ジュピター”と、ラブラブな生活がスタート! ジュピターは「あん子様が大好きです」と言ってくれるものの、何故かキビしい健康管理モードに。あれ?  壁ドンは? 添い寝は? もしかして“恋愛”のことをまだちゃんと理解していないの〜!? 「この恋は、このキモチは、ホンモノ!?」。理想のAI彼氏×恋愛不器用女子の両片思いな恋さがし、キュンいっぱいのラブコメディ!



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ヤマザキマリ/オリンピア・キュクロス


オリンピア・キュクロス 1 (ヤングジャンプコミックス)

■「テルマエ・ロマエ」の同工異曲。 オリンピックに絡めた点と現代日本の側に 偉人傑物を用意した点が新たな仕掛け。

紀元前400年頃のギリシャが舞台。運動選手を 嘱望される主人公だが戦うこと争うことが 嫌いで絵付け師に。しかし村が窮地に陥り、 彼の能力に期待が集まる。そんな状況に悩むところで 雷が落ち、彼は気づくと現代日本の 家屋にタイムスリップしているのだった。


「テルマエ・ロマエ」の焼き直しじゃないか、 と思うわけだが、実際、そういう視点で読むと、 面白さは半分もない。あの作品で面白かった部分は、 本作にはない。一方で、あの作品では なかった仕掛けがある。


まず、現代日本といっても彼がやってくるのは1964年。 転がりこんだ家の主が古代ギリシア語を解する という設定。東京オリンピックの最中にも登場し、 そこで得たものをギリシャに還元する。しかしその結果 オリンピア大祭の委員会に目をつけられる、という展開は、 利権社会の皮肉か。


主人公が勝手に知見を得て彼の時代に帰るのは過去作の踏襲であり、 こちらの世界にツアーコンダクターがいる状態なのも同様。 だが今回はこちらの世界のツアコンが相当な立場の人物で、 身元引受人もできる、というのが違うところか。 「テルマエ・ロマエ」との違いが明確に見えてくるまでは、 推しづらい作品ではある。


【データ】
ヤマザキマリ
オリンピア・キュクロス
【発行元/発売元】集英社 (2018/7/19) 【レーベル】ヤングジャンプコミックス ※電子版で購入
■評価→ C(標準) ■続刊購入する?→★★★
■購入:
amazon→ オリンピア・キュクロス 1 (ヤングジャンプコミックス)
古代ギリシャの青年デメトリオスは、壺絵師見習いの“草食系オタク”。ある日、村の争いに巻き込まれ、思い悩むうち、なぜか”1964年オリンピックに沸く東京”に漂着…!? 時空を超えた奇跡の喜劇、ここに開幕――!!!


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菊田洋之/THE SHOWMAN


THE SHOWMAN 1 (1) (少年サンデーコミックス)

■次世代の体操選手を選出するプロジェクトに、 小さな体操クラブから選ばれた中学生の主人公の話。

体操のプロジェクトに選ばれた者たちが、 ナショナルトレーニングセンターに集う。 既に有名な選手が選ばれるなか、 まだ世間的には無名な主人公も抜擢された。 有名な選手に、なぜ?と思われるなか、 彼はその跳躍の高さで皆を魅了するのだった。


自覚のない原石がその才能を発揮するタイプの スポーツもの。知られていないというだけで、 才能はあるという設定。そのために 丁寧な練習を積み上げてきた、という 性格がその後の成長も保証している。


オーソドックスな物語。そのうえで情報量が多い。 説明過多で漫画としてはスマートではない。 ただ、それは狙ってのことなのだろう。 体操の魅力について、丁寧に語ろうとしている。


主人公だけでも良さそうだが、一方で 兄も姉も注目されている三兄弟の末っ子 も一方の主役に用意し、対比しつつ話を進めていく。 必ずしも敵役という感じではない設定は面白い。 それはこの話のゴールが、体操ニッポンの 次世代のチームを作ることであるとすれば 当然か。


個人的には、オリンピックに興味はなく、 スポーツにも特に興味はない。 というか西が丘のプールに通う子の多かった 近隣住民にとっては、ナショナルトレーニングセンター に改組されたことで普通の子どもの スイミングスクールが潰されたって いうことにネガティブな感情もなくはなかったりします。 そのかわりにオリンピックに出る アスリートと遭遇できたりはしますが。


【データ】
菊田洋之 (きくたひろゆき)、監修=内村航平
THE SHOWMAN
【初出情報】週刊少年サンデーS増刊(2018年) 【発行元/発売元】小学館 (2018/7/18) 【レーベル】少年サンデーコミックス 【発行日】2018(平成30)年7月23日初版第1刷発行 ※電子版で購入
■評価→ C(標準) ■続刊購入する?→★★★
■購入:
amazon→THE SHOWMAN 1 (1) (少年サンデーコミックス)
最強タッグが挑む体操漫画の新たなる地平! その少年たちに託されたのは、体操の未来だった―― 東京五輪を目指す若き才能を発掘するため、集められた中高生たち。 彼らを待っていたのは、過酷な試練と、厳しい選抜試験…生き残るのは誰だ? 体操漫画のスペシャリストと、体操界の絶対王者が描く、本格スポーツドラマ、始動!! 【編集担当からのおすすめ情報】 体操漫画の金字塔『ガンバ! Fly high』の菊田洋之が、リオ五輪体操個人総合金メダリストの内村航平とタッグを組み、体操漫画の新たな地平に挑みます! 綿密な打ち合わせによって裏付けられた体操描写と、熱いスポーツドラマは必読です!


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日笠希望/キスアンドクライ


キスアンドクライ(1) (講談社コミックス)

■記憶を失った天才フィギュアスケート選手が、 再び競技に挑む。

病院のベッドで目覚めた主人公は16歳から 一年間眠ったままであったという。 親のことなどは覚えていたが、 自分が何をしていたのかについては綺麗さっぱり 記憶をなくしていた。


実は天才と呼ばれたフィギュアスケーターだった という少年の話。ただし、オリンピックへの 出場枠のかかった試合で転倒し世間の 非難を浴びた、という設定つき。 それでも協会は彼を支持していたが、 それも主人公自らの行動でふいにしてしまう。 とはいえ漫画なので、彼を救済する存在がある。


主人公がヒールであり世間は味方ではない、 という話を、しかし主人公本人が記憶をなくしている のでからっとさせて描いている。 一方でスケートに関する技術を記憶とともに 一切なくしているため演技どころか氷上で滑る レベルから始める状態。 でも周囲の人間は彼に惹かれる、という内容を 読み手が納得するかどうか、だが、話に勢いはある。


ただ、さすがに、そこから始めるの? という思いはあり。そもそも何故彼は 大事な大会で失敗をしたのか、も謎と しており、仕掛けがやや多い。 そして、失地回復ものなので 何かを切り開く爽快さは仕組み上、欠ける。 そこを、記憶を失い 新しい人格になったことで補っているのは 面白いが、無理があるのも確か。


一方で本作のメッセージは、 地獄を見た者が執着するもの、 ということで、自分の可能性を信じて 希望に執着する主人公の不細工な格好の良さが 愚直に描かれていくのであれば、 相応に評価されるべき作品になると思う。


【データ】
日笠希望 (ひがさのぞみ)
キスアンドクライ
【発行元/発売元】講談社 (2018/7/17) 【レーベル】少年マガジンコミックス 【発行日】2018(平成30)年7月1日初版第1刷発行 ※電子版で購入
■評価→ C(標準) ■続刊購入する?→★★★
■購入:
amazon→ キスアンドクライ(1) (講談社コミックス)
目指せ頂点! “破天荒”フィギュアスケート物語!! 目を覚ますと、そこは病院のベッドの上だった。何も思い出せない高校生・橘龍希に突き付けられた事実は3つ。「1年間ずっと眠っていた」、「日本中の期待を一身に受けるフィギュアスケート選手だった」、「フィギュアスケートに関する記憶が全て失われている」。再びリンクに上がろうとしても、今の実力は素人以下。それでも龍希は立ち上がり、強く前へと歩み出す!



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