『幕が上がる、その前に。彼女たちのひと夏の挑戦』を見ました。

●『幕が上がる』のドキュメンタリー、『幕が上がる、その前に。彼女たちのひと夏の挑戦』を見る。演劇を志す高校生が見ると面白いかもしれない。モノノフには寧ろテレビでやっていた「はじめてのももクロ」のほうが盛り上がる。が、そちらも生粋のモノノフには当たり前の内容かもしれない。 ところで『幕が上がる』だが、3週め土日を終えておよそ興収3億円。同時期公開の『くちびるに歌を』に比べて公開規模が半分だが興収は同じ。とはいえ後者の成績が酷すぎるとも言える。そして、単価が1500円オーバー。普通は1300円程度なのだが、これはおそらく舞台挨拶が引き上げたのだろう。舞台挨拶つきは2000円。ということは1300:2000≒7:3。興収3億円で単価1,500円なら動員は20万人。舞台挨拶つきの映画鑑賞者は6万人。シングル初動が6万枚程度なので、つまり、そういうことか。


『幕が上がる』

幕が上がる 』 平田オリザ原作、本広克行監督と、下手なことになっている危険性もなくはないのではないか、と危惧していたが、ふつうに良い映画で安心した。アイドル映画というよりも青春映画。赤・黄・緑推しには良い映画、しかし桃・紫ファンにはどうだろう。

演劇部を通して描く少女の成長譚。主演のさおり=百田夏菜子が悩んで育つ様にフォーカスした話で、見やすい。一方で、主人公自身もそうだが、他の人物は掘り下げが殆どない。だからこそ物語をじっくり描く余地が生まれていて結果的には良いのだけれど、演目自体は当然部分的に摘んで見せるほかないことも相まって、話の展開の唐突さ、佳作なんだけれど物足りない、という気分になってしまう。

しかし、演技は自然で、百田夏菜子は凄い。ちなみに予告編の部分は本編にもあるが、そういう内容ではない。そもそも最初に燃やそうとしている台本にサマータイム〜ならぬウィンタータイムマシーンブルースとかなんとか書いてあるように小ネタ満載。しかしそれが小ネタで終わってしまっているのは、本編を侵食せず崩さないで済んだ一方で、カルトな作品になることを放棄してしまった。軽快なコントのようなスピーディなやりとりの部分も、一部あるだけで、それを膨らました映画とはならなかった。れにちゃんの役は一番存在感がなかったが、これは本当は卒業する先輩にあてるべきだったのではないか。とはいえその役はれにちゃんでは荷が重いか・・・。本作は多分にももクロメンバー5人の本質を活かすという要素も前提にあっただろうから、れにちゃんが空気になってしまうのは致し方ないところかもしれない。


『劇場版PSYCHO-PASS サイコパス』

●連れの要望で映画館で『 劇場版PSYCHO-PASS サイコパス 』を見る。 コミカライズの一巻を読み 、SF設定は評価しつつも、ヒロインのキャラクターはどうなのだ?と評していたが、なるほど、彼女の存在意義は、本作を見てわかった。

日本の実写映画は見るに値しないものが多く、評判のよいものも、それはちまちました作品が多くて、未来を描くハードSFなんてものはもはや存在しない。しかし日本のアニメにはそうした作品が数多く存在し、レベルの高い話が展開されている。

本作もそうした一つで、システムの話がテーマである。システムにより守られた社会が良いのか、そのシステムに人間は挑むべきなのか、という内容を設定しつつ、答えは出さない。そもそもヒロイン自体が、システムの中でシステムを守る仕事をしながら疑問も抱いている。そして、システムはそうした彼女を、システム後の社会を見据えてなのか、厚遇しているように見える。

ヒロインのような微妙な立場で揺れながら、揺れたままの人物を描くということは、おそらく欧米社会ではできない。その場合、未熟なモラトリアムとしてしか描くことができず、そうでない描き方をしようとすれば、ピーターパンのようなトリックスター的立ち位置に置くことになってしまう。宗教や信仰によりアイデンティティが支えられている社会では、それが邪魔をしてしまう。なので欧米人にとっては本作のヒロインのような人物は、何か、わけがわからないものになるだろう。そう考えると「攻殻機動隊」の草薙素子を彼らはどう描くつもりなのか、不安になる。あの存在の微妙さを、欧米社会はおそらく許容しないのではないか。

なお本作では、システムだけを取り入れたふりをして、実際はごまかして運用していた社会が舞台になっている。最終的には、利用しようとした側はシステムが整備された時点でパージされ、しかし、そうした段取りで整備されたシステムもヒロインの指摘を受け入れ人民の声を聞くことにする。・・・中国人が見たら、どういう感想を抱くのだろう、と思う話でございました。


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